その十五 仏教の基本となる三宝
お釈迦さまが説かれた最初の御説法によって、五人の比丘の心は、清らかで、大きな喜びに満たされました。
そして、比丘たちは、お釈迦さまに帰依し、この瞬間、仏教において大切な「三宝」が確立されたのです。
大切な三つの宝
「三宝」とは、仏教における三つの宝物のことです。 みなさんは「宝物」と聞くと、何を思い浮かべますか。自分が大切にしている物や家族など、人によって様々でしょう。 仏教では、お釈迦さまのように悟りを得られた「仏」、その仏が説かれる教えである「法」、その仏と法に帰依する人たちの集まりである「僧」の三つを宝物としています。
お釈迦さまは、
「三宝が揃うことによって、苦しみのない世界に至ることができる」
と説かれています。つまり、三宝の一つでも欠けたら、私たち人間が救われることはないというほど、仏教において、三宝は大切にされてきたのです。
日本仏教の祖である聖徳太子は、国を治めるために定めた『十七条憲法』の中に、
「篤く三宝を敬え。三宝とは仏法僧なり」
という教えを入れ、この三宝を大切にする心を、日本に弘められました。そのお蔭で、日本に仏教精神が根づき、今でも仏教信仰が生き続けているのです。
善き仲間を持つこと
私たちは、多くの先人が護り伝えてこられた御仏の教えに出遇うことができました。その時、教えを信じ喜んだ心を「初心」といいます。しかし、初心を常に持ち続けることは、とても難しいことです。
仕事や勉強で忙しい時、病気や怪我をしてしまった時などは、そのことで頭がいっぱいになり、仏や法を大切にする気持ちが薄れてしまいます。
だからこそ、三宝の一つである「僧」が必要です。信頼できる善き仲間がいれば、お互いを支え、励まし合い、気持ちを一つにして、厳しい状況をも乗り越えることができます。反対に、僧の助けがなければ、そのまま普段の生活に流され、初心を忘れてしまいかねません。
お釈迦さまも、
「善き仲間を持つことは、 悟りに至る道そのものである」
と仰っています。
善き仲間のお蔭で、仏や法を信じる気持ちを保つことができ、最後には、苦しみの世界から離れることができるのです。
五人の比丘が帰依し、仏教の基本となる三宝が揃ったお釈迦さまの教団は、その後も、多くの人々を救い、善き仲間を増やしていきました。