その十六 布施 思いやりの心


仏・法・僧の三宝がそろったお釈迦さまの教団は、次第に大きくなっていきました。
ある時、お釈迦さまは、マガダ国にて、ビンビサーラ王に、悟りの内容についての御説法をされました。
感動した王は、お釈迦さまに帰依し、精舎を布施したのです。

ビンビサーラ王の熱い想い
マガダ国は当時のインドにおいて、とても大きな力を持った国の一つでした。そのような国の王さまが、なぜ、精舎を布施したのでしょうか。
それは、ビンビサーラ王がお釈迦さまの説かれた教えに感動し、
「お釈迦さまのために、何かさせて頂きたい」
「この素晴らしい教えを、多くの人々に弘めたい」と思ったからです。
王さまは、「自分に何ができるだろう」と考えた結果、
「お釈迦さまとその弟子が落ち着いて生活でき、教えを求める人々が御説法を聞きに行きやすい場所を用意するべきだ」と思いつき、精舎を布施しました。
この精舎こそが、「竹林精舎」といわれる、教団初めての精舎です。
お釈迦さまは、その後、何度も竹林精舎で御説法をされ、ビンビサーラ王が願った通り、多くの人々に、お釈迦さまの教えが弘まっていったのです。
思いやりの心
布施とは、ビンビサーラ王のように、自分のことを気にかけず、他人のために何かを行うことを指します。
仏教では、布施がとても大事な教えとして説かれています。
なぜなら、布施をすることで、私たちは苦しみのない世界に近づくことができるからです。
私たちの心は、自分では意識していなくても、
「あれがほしい、もっとほしい。
自分の思い通りにしたい」
と様々な欲望に悩まされ、執着してしまいます。
そのような気持ちを持っていても、ビンビサーラ王がお釈迦さまに布施をした時のように、
「どうすれば、相手が喜んでくれるだろうか。
自分は相手のために、何ができるだろうか」
という思いやりの心で行動すると、気づかないうちに、執着から離れ、喜びに変わります。
その結果、苦しみから逃れることができるのです。
これから、どのような布施があるのか詳しく学んでいきたいと思います。