その七 悟りへのきっかけ
苦行を捨てられたお釈迦さまは、食事をとり体力を回復しようと思われました。
そこにスジャータという、近くの村に住む娘がやってきて、乳がゆの供養をしたのでした。
悟りへの気づきを得る
お釈迦さまにとって、スジャータとの出会いは、とても大切なものでした。
どれだけ大切なものであったかは、後にお釈迦さまが、
「私がこれまでに受けた施しの中で、特に素晴らしいものが二つある。そのうちの一つは、供養を受けた後に悟りを得ることができたものである」
と仰った言葉から知ることができ、それこそがスジャータの供養であるといわれています。
お釈迦さまは、スジャータとの出会いによって、悟りを得る手がかりをつかまれたのでしょう。
お釈迦さまはそれまで、自らの力を信じ、限界まで苦行を続けられましたが、悟りを得ることはできませんでした。しかし、スジャータから思いがけない供養を受けたことにより、自分一人で生きているのではなく、周りに生かされているということに気づかれました。つまり、スジャータの供養は、お釈迦さまにとって、特別な意味があるものだったのです。
お釈迦さまが感じられたように、みなさんもふと、「自分一人では生きていけない」と思ったことはありませんか。
私たちは生かされている
家族や友人、周りの人たちに助けてもらい、そのように感じたことがある人も多いでしょう。
しかし、周りのことを見て、よく考えてみると、私たちは、生まれた時から、常に自分以外の何かから影響を受けていることに気づかされます。両親がいなければ、人間として生まれてくることもできません。いつも食べている肉や野菜、それらを育む大自然がなければ、私たちは生きていくことすらできません。
つまり、私たちは、自分以外の様々な人やものの「おかげさま」によって生かされているのです。このことに気づくと、自分以外の人やものは、全て自分と関わりがあると感じることができます。
お釈迦さまは、この気づきを得て、悟りの世界にまた一歩近づかれました。しかし、悟りを得る直前に、最後の試練が待っているのです。