その六 徹底した苦行の果てに
出家されたお釈迦さまは、悟りを得るための頼るべき師に出会うことができず、「苦行」という、身体を徹底的に苦しめる、とても厳しい修行を始められました。
「後にも先にも、私ほど厳しい苦行をした者はいない」と仰ったほどの苦行を六年間も続けられたお釈迦さまでしたが、悟りを得ることはできず、苦行を捨てられたのでした。
悟りを求めて
なぜ、お釈迦さまはそれほどまで、大変な苦行をされたのでしょうか。それは、身体を苦しめることで、心の汚れを抑えこもうとされたからです。
師に巡り合えなかったお釈迦さまは、自らの力で悟りを得るほかないと考えられ、苦行に打ちこまれました。どれほど厳しい修行を続けられても、苦しみの解決をするために出家されたお釈迦さまの強い気持ちは、決して揺らぎませんでした。
しかし、身体は少しずつ限界に近づいていき、どれだけ必死に苦行をしても、心の汚れがなくなることはなかったのです。
そしてついに、苦行を捨てられ、悟りを求めて別の道を探し始められたのでした。
苦行の先に
お釈迦さまは、厳しい苦行を徹底されたからこそ、「苦行では、苦しみを解決し、心の安らぎを得ることができない」ということに、ようやくお気づきになったのでした。
もし私たちが、長い間、一生懸命取り組んでも、成果を得ることができなかったとしたら、「時間を無駄にしてしまった」と思うことがあるかもしれません。
しかし、お釈迦さまの心の中は全く違っていました。徹底して苦行をされたことで、悟りに至るための手がかりをつかむことができ、喜んでおられたのです。
その手がかりとは、悟りを得るためには、王子の時のようなぜいたくな暮らしでもなく、厳しすぎる苦行でもなく、そのどちらからも離れたところに、答えがあるのではないかというものでした。
そして、苦行を捨てられたお釈迦さまは、その後のある「出会い」がきっかけで、悟りの世界に一歩、また一歩と進んでいかれるのでした。