その二 生・老・病・死の苦しみ
カピラ国の王子としてお生まれになったお釈迦さまは、とても裕福で、ぜいたくな暮らしを送られていました。
しかしある日、今まで見たことのなかった老人・病人・死人と出会い、恐怖と苦しみを感じられました。
人間が持つ大きな4つの苦しみ
若くして地位や名誉、財産、幸せな家庭までも手に入れられたお釈迦さまは、老人・病人・死人との出会いによって、
「私もあのような姿になってしまうのだ」と、将来の自分の姿を想像されました。
その結果、大きな悲しみと苦しみが、お釈迦さまを襲ったのです。
お釈迦さまは、老人との出会いで、
「人間は誰でも年老いてしまう」という苦しみを、
病人との出会いで、
「人間は誰でも病気になってしまう」という苦しみを、
さらに死人との出会いで、
「人間は誰でも死んでしまう」という苦しみを、自覚されたのでした。
後に、お釈迦さまは、「人間には、四苦(4つの苦しみ)がある」と説かれました。
四苦とは、「老苦」(老いる苦しみ)、「病苦」(病気になる苦しみ)、「死苦」(死ぬ苦しみ)に、「生苦」を加えたものです。
生苦は、「生まれる苦しみ」とも読めますが、「人間に生まれてしまったこと自体が苦しい」という意味もあります。
お釈迦さまは、これらの4つの苦しみを、「人間には避けることができない苦しみである」と説かれたのです。
思い通りにならないから苦しい
私たちは必ず年を取り、自分の思い通りに体を動かせなくなってしまいます。
すると、年を取った自分と比べて、「あの頃だったらできたのに」と、過去の姿を思い出します。
実は、ここに苦しみがあるのです。
「年を取りたくないのに、取ってしまう」と感じることによって、苦しみが生まれます。
同じように、「病気になりたくないのに、なってしまう」
「死にたくないのに、死んでしまう」と感じることも苦しみです。
生・老・病・死は、私たちがどれだけ努力を重ねたとしても、
また、地位や名誉、財産があったとしても、思い通りになりません。
人間には苦しみがあることを自覚されたお釈迦さまは、その後も思い悩む日々を過ごしておられました。
しかし、ある日、人生を変えるほどの出会いが訪れたのでした。