その十三 苦しみの原因
お釈迦さまは、初転法輪 (初めての御説法)で、中道の教えに続いて、四つの真理、「四諦」を説かれました。
そして、四諦の一つ目の真理は、「苦諦である」と仰いました。
私たちの心を悩ますもの
私たち人間は、日々、幸せを求めて生活しています。
今が不幸せだと感じている人は、「少しでも幸せになりたい」と願うでしょう。
また、今が幸せだと感じている人は、「この幸せがずっと続いてほしい」と思うでしょう。
しかし、お釈迦さまは、「人生は苦しみに満ちている」と仰せになり、さらに、「人間が持つ苦しみの原因は、激しい欲望である」と説かれました。
仏教では、激しい欲望や怒りなど、私たちの心を悩ますものを、「煩悩」といいます。
煩悩は、私たちの心を常に覆っており、誰も煩悩から離れることはできません。
思い通りにならないから苦しい
私たちは、自分自身が気づかないうちに、煩悩によって苦しんでいます。
たとえば、食べることが大好きな人は、「美味しいものを食べたい。有名な店の料理を食べてみたい」と思うでしょう。しかし、どれほど食べても、「今度は、また別の店の美味しい料理を食べてみたい」と、次々に欲望が湧き出てきてしまいます。
もし、「食べたい」という気持ちが満たされないと、次第にいら立ったり、時には、文句を言ったりしてしまいます。
このように、必要以上に求める心(貪欲)、怒りの心(瞋恚)、不満の心(愚痴)こそが、煩悩です。
私たちが生きる世界は、常に変化し続けています。そのため、次の瞬間には何が起こるか、誰にも分かりません。
それでも、私たちは、「自分の思い通りにしたい」と考えてしまいます。しかし、たとえどれだけ願っても、全てが自分の思い通りになることはありません。だからこそ、私たちは苦しむのです。
「集諦」とは、このように、「苦しみの原因」を明らかにした教えです。
では、お釈迦さまが見つけられた「苦しみのない世界」とは、どのような世界なのでしょうか。
また、その世界に行くためには、どのようにすればよいのでしょうか。お釈迦さまは、その教えを、四諦の三つ目の真理「滅諦」、四つ目の真理「道諦」の中で説かれました。